ねぇアスラン。僕、青色が好きなんだ!」

 

キラ・・・。キラ?

 

「なんていうのかな・・・海の青でもなくて空の青でもない・・・」

 

今、俺の前に居るキラは本当にキラなんだろうか・・・。

あの時、俺に笑いかけてくれた君なんだろうか・・・。

あの時の君は、そんな罵声を俺に浴びせていたっけ?

 

(俺の死を望むような、そんな言葉を)

 

煩いほどに鳴り響く警報。

赤く染まっていく視界。

画面越しには君の操るガンダム。

俺を殺そうとしているんだ。

 

ボン・・・。

 

何処からか爆発音。

きっと自分の機体から発せられてるのだと思う。

キラの攻撃に耐えられなくなっているこの機体の壊れ行く、音。

 

「少し青に緑を混ぜて透明にしたような・・・」

 

ねぇキラ。

 

「そうだ! あの色だ! あの・・・・・・・・・」

 

あの後、君はなんて言おうとしたんだっけ?

 

 

 

『Paraiba Tourmaline』

 

 

 

 

数年前。月のコロニー。

 

 

 

「あ! アスラン! 遅かったね」

「ごめん。キラ。あの先生の話長くって」

「別に良いよ」

 

何も知らなかったあの頃。

俺達はよく、唯一地球の見えるドームに、二人で集まった。

そこは本当は立ち入り禁止の場所で、バリケードが張り巡らされていたけれど、俺らぐらいの子供なら、簡単に入れる隙間が一つあった。

そこからこっそり忍び込んで、そこで宿題の教え合いっこや、その時ハマっていた物について話し合ったりしていた。

そこは、中倒れした建設途中のアミューズメントドームで、中は広かったし、電気が通っていなくても年中良い感じの気温を保てるようにしてあって、とても居心地が良かったからいつもそこに長時間居座っていて。

何でもない、他愛もない話をして笑い転げて。

あんな幸せな日々はなかった。

 

君は、いつも俺の傍で幸せそうに笑っていて。

 

あの笑顔を見るのが好きだった。

どんなに寂しくても、あの笑顔さえあるのならば。

両親と離れていようが、構わなかった。

あの笑顔を守る為なら、なんだって出来た。

大好きな、大好きなキラ。

 

「ねぇアスラン・・・」

「何? キラ?」

勉強も一通り終えて、いつもの楽しい話題に入る少し前。

あの日君はとても悲しそうな眼をして、ドームの特殊ガラス越しに見える

地球を眺めていた。

「どうして、ナチュラルとコーディネーターは争うんだろう・・・」

眺めながら呟かれた言葉は、とても悲哀に満ちていて。

俺の心も締め付けられた。

「だって、僕達、元々は、あの地球から生まれてるんだよ? 僕達の故郷は何時だってどう足掻いても同じだって言うのに、どうして争うんだろう・・・」

キラの両親はナチュラルで、でもキラはコーディネーターだから。

きっとそんな境遇が、こんな優しい言葉を言わせるのだろう。

今や当たり前と化しているその争いにも心を痛めるキラの優しさが、愛しかった。

その優しさが無くならない様に、祈りながら、俺は言葉を綴った。

「・・・だから、俺達が止めさせればいいじゃないか。その争いを」

「アスラン・・・でも、僕は無理だよ。そういうの、苦手なんだ」

やっとキラの顔に笑顔が戻る。

苦笑、と呼ぶような笑顔であっても、先程の泣きそうな顔よりは、まだマシだから。

「じゃぁ、俺が必ず無くすよ。絶対に無くしてみせる。・・・キラの為にね」

「アスラン・・・本当に君は優しいね」

今度こそ、キラは、満面の笑みを浮かべた。

 

 

 

 

 

・・・そうだ。

そうだった。

俺は、あの笑顔を守る為に、ガンダムに乗ったんだ。

争いを無くす為に。

 

 

・・・勝って、争いを無くす為に。

 

 

 

なのに、どうしてこんな事になっているんだろう・・・?

 

 

ボンボン・・・ッ

 

爆発音が近くでした。

もう駄目だ。

もうすぐで、コックピットも爆発するだろう。

 

 

ビィーッビィーッビィーッ!

 

 

 

けたたましく鳴り響く警告音。

 

 

 

 

どうして。どうしてこんなことに。

 

 

俺はただ。

俺はただあの笑顔が守りたくて、それだけなのに。

俺は。

 

 

 

 

 

赤い視界。その中で、ふと、あるものを見た。

キラのバックに輝く球体。

 

 

・・・地球だ。

 

 

 

 

そうしていきなりある会話が蘇る。

 

 

「ねぇ! アスラン! 僕、青色が好きなんだ!」

 

他愛もない会話の一部分。幸せのかけら。

 

「なんていうのかな・・・海の青でもない空の青でもない・・・」

 

赤い視界の中、その脳裏に蘇る画像の鮮やかさが眩しい。

 

「少し青に緑を混ぜて透明にしたような・・・」

 

君の声も優しいまんま。

 

「そうだ! あの色だ! あの・・・」

 

キラ。

 

「・・・地球の色だ!」

 

 

 

 

『あの地球に還れると良いね。ナチュラルもコーディネーターも関係なく』

 

 

 

 

・・・そうか。そうだったんだね。キラ。

君の言っていた『争いの無い世界』は・・・。

君が僕に託そうとしていたあの約束の本当の意味は・・・。

 

 

 

ボンッ!

 

 

 

すぐ近くで音がした。

 

もう視界には何も映らなかった。

俺を殺そうとしているキラの姿も、何もかも。

 

 

 

 

(そういえば、君は俺が約束を守らなかったらよく怒ったっけ・・・)

 

 

 

・・・そうして、二人の、既にあの頃から微妙に違えていた歯車は。

噛み合わなくなり、離れてそして。

今、完全に壊れたのだった。

 

THE END.

 

 

坂井ちゃん素敵な相互記念小説を有難うございますっ。

      めためた感動しましたー。

      何でこんなにも素敵な小説が書けるのか不明ですよぅ。

 

      次回も期待しておりますー(おい)。

      私の方からも近い内に送らせて頂きますねっ。

      ついでにキララクまで送ってたらゴメンです(ニヤリ)。

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