死の庭で、君を待つ 5

 

 どれだけ。夢見ただろう。

 目醒めれば、横(そば)に彼がいて。

 お早う・・・と言ってくれる日を。

 どれぐらいの間、望み続けただろう。

 

 ――――アスラン・・・。

 

「キラ・・・大丈夫・・・?」

 朝、抱かれた所為だろうか。

 躰が熱を持って。

「んー。大丈夫じゃない・・・」

 動けなかった。

 けど、水を上げる時間が来たから、

「ねぇ・・・庭に連れてって」

 昔みたく、手を伸ばして彼に甘えて。

「・・・ったく、変わらないな、お前は・・・」

「変わったよ! 女の子にモテる様になった」

「あー・・・はいはい。って、言っても過去の産物だろう?」

「うっ・・・、うるさいなぁ。でも、事実は事実だよ」

 たわいない会話に笑った。

 

――――例エ、偽リデモ・・・――――

 

 それが嬉しくて。

 忘れていました。

 僕の残り時間が、

「そうだね・・・。事実だな。認めて上げよう」

 数日を切っていた事を・・・。

 

*   *   *

 

 死の庭には、花の匂いの他に、甘ったるい血の臭いがして。

 日に日に、自分の躰がキラに堕ちて逝く気がして、

「キラ・・・、キラ・・・。俺の、キラ・・・」

 紛らわす為に、更に彼の全てに溺れて。

 

――――残り・・・日――――

 

 闇に舞う、亜麻色の髪も、白い肌も。

 全てが、愛しく、

「んー、アス・・・、庭に出たい・・・」

「花が、気になる?」

「そう言う訳じゃないけど・・・。あの・・・月が見たい」

 甘えられると、答えてしまう。

 彼が望む全部を、叶えてやりたくなる。

 

 ――――残り時間とか関係なく。

 

 しかし、そんな事が出来るはずもなく。

「・・・っ、キラ・・・」

「やっ・・・、ぎゅっ、てして。好き・・・。アスラ・・・が大好きだった」

 出来るならば、戦争なんかで離れず、ずっと一緒にいたかった・・・。

 白紅(びゃくこう)の花の中。

 月に照らされて、彼・・・キラは瞳を閉じた。

 瞬間、咲き誇っていた花々が枯れて。

――――っ・・・、アス・・・ラン・・・。でも、これからは・・・ずっと一緒だから・・・」

 死の庭が、終わりを告げる。

 けれど、

「うん・・・。キラ、一緒だ。愛してる・・・」

 俺達は、まだ・・・終わらない。

 

END.

 

終わりです。

これの残りは本で“書き下ろし”として、

書きたいと思います・・・。

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