距離
あと一センチ。
ほんの少し、指先を伸ばすだけで彼の体温を感じる事が出来る。
そんな事は――――わかっていた。
けれど、
『この疵は一生消さない』
俺に触れる権利なんてないから。
『一騎・・・』
ただ・・・彼の髪に触れる事を許された左――――指だけが、熱かった。
――――それは、近く見えて遠いもの――――
「皆城くん、あのね・・・」
遠見が――――彼・・・総士に触れる事を許された人達が羨ましかった。
「昨日の話の続きなんだけど・・・」
「ああ、それの事なら・・・」
何の負い目もなく、見て貰える彼女。
笑顔を向けて貰える彼ら。
全てが幸せそうで。
俺だけが浮いている様で。
(――――・・・、総士・・・)
一番彼と近かったはずの自分との距離が、今は誰よりも開いているみたいに見えた。
――――見て・・・いたくない・・・――――
だから、二人に気付かれない内にアルヴィスを抜け出して。
「・・・あれ・・・、一騎くんは・・・?」
“ひとり山”まで走って来ていた。
――――俺には一生向けては貰えないだろう、あの笑顔。
「・・・っ、わかって・・・た、けどさ・・・」
だって・・・見ていたくなかったから。
総士が他の誰かと親しくしている姿なんて。
優しく接しているところなんて。
――――総士・・・。
絶対に瞳に映したくなかった。
でも、
「一騎」
「――――っ・・・。そう・・・し・・・?」
だからと言って、一人になれる訳もなく。
抱き締められた躰。
吹き込まれる甘い吐息。
追い掛けて来たらしい幼馴染に捉えられて。
――――何で・・・どうして・・・。
触れられる事を許された肌は・・・懐かしい温もりを纏っていた。
END.
メー○ュのPIN−UPの二人を見て思い付いたネタ。
あの総士さんの笑顔にヤラレました。
もう彼の笑顔も優しさも、総て、一騎くんの為だけにあるんです。
きっと総士さんは一騎くんがいなかったら、これっぽっちも笑わないです。
だって・・・一騎命だから。
皆城さんの世界は、一騎くんオンリー。
彼以外は、ただの『荷物』なんですよ。
※フリーですので、お持ち帰り下さって構いません。
ただ、ご報告頂けたら嬉しいです。
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