Filthy 〜魔界編〜
『魔界に行かないか・・・?』
そう言われ、少なくない不安を感じながらもアスランを信じて、此方に来てから数日。
彼について、いくつか気付いた事がある。
一つ目は、眠っているフリをしているだけで、本当は眠ってなんかいない事。
二つ目は、食事は摂っても摂らなくても大丈夫だと云う事。
三つ目は・・・なんて、他にもたくさん言い切れないぐらいあって。
ずっと一緒にいて、どうして気付かなかったのか・・・って思うけれど、アスラン曰く、
「いや・・・、キラ・・・?」
周りに合わせていたから仕方ない、らしくて。
「僕だけにでも言ってくれたら・・・」
それがちょっと寂しくて、プーと拗ねて見せる。
すると、彼は苦笑して、
「これからは何でも言うから」
ごめんね・・・と、小さく囁きキスをしてくれる。
そんな他愛ない触れ合いが心地好く、大好きで。
敵地敵陣の中だと言うのに、僕は安心しきって。
ただ、ゆっくりと流れて行く時間を、二人切りで過ごしていた。
静かに。
平和に・・・。
だけど、それは長く続かずに。
魔界巡り(正確には魔界観光)をしている途中で出逢った、紅い髪に灰色の瞳を持った少女の手に寄って、僕達の関係は揺らぐ事になる。
――――ドウシテ、此処ニイルノ?――――
何故なら、出逢った――――いや、再会した少女が、天界で出来た初めての友達で、
「――――フレイ・・・?」
心許せた人だったから。
* * *
いつだっただろうか。
以前、キラが零した言葉で忘れられないものがある。
それが叶えば、この歯痒さも消えてしまう様な。
願ったり適ったりな・・・想い・・・だけど。
――――同族になれたらいいのに・・・――――
魔界の夜景は、魔族でも魅入ってしまう程の美しさを持っている。
だから、キラなら絶対気に入ると思って、連れ出したそこ。
案の定、彼はそれを喜んで。
「う、わー! 綺麗・・・!」
小さな羽根をパタパタ動かして、光に溢れた景色を見る。
その様は、純粋無垢な天使“そのもの”で。
自分の色に染めたくなるが、
「どう、キラ。気に入った?」
「うん! 凄く気に入ったよ!」
衝動を抑え付けて。
「そう・・・良かった」
「・・・アスラン・・・?」
後ろから、そっと抱き締めるだけにする。
しかし、
「・・・っ、アス・・・」
キラは先を強請って。
「君が望むなら・・・」
俺は、理性を手放す。
――――キラは天使のままでいい。
TO BE NEXT.
『Filthy〜魔界編〜』から一部抜粋。
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