不安に揺れる夜は

 

 信じたくて。

 信じられなくて。

 声の届かない距離。

 お前だけが全てだった。

 

 ――――泣きたいのなら泣けばいい。

 

 いつから我慢しているのだろうか。

 今にも伝いそうな涙を瞳に溜めながらも、決して零す事のないそれ。

 ギリギリの所で保たれ、静かに微笑む姿は何処までも儚く。

 俺が知っているキラは、こんなではなかった。

 クルクル変わる表情。

 泣いて怒って。

 拗ねて笑って。

 とても明るくておっとりしている所為か、抜けている所もあって。

 ただ・・・純粋に生きていたのに。

『ごめんね・・・』

 綺麗なままでいられなくって。

 血に濡れた手で。

 本当・・・ごめんね・・・。

 再会したあいつは、何もかも諦めた表情をしていた。

 そして、何より変わったのは、

『・・・キラ、お体に障りますわ・・・』

『ラクス・・・、有難う』

 じゃあ、アスラン。もう行くね。

 キラの隣に立っているのが俺でなくなった事だった。

 

 出逢った頃から一緒で。

 ずっと共にいた。

 悲しい事も楽しい事も。

 辛かった事も喜んだ事も。

 全部、二人一緒だったのに。

 

 知らぬ間に彼女の手を取って。

 踏み込めない程感情を共有していた。

 けれど・・・。

 それでも俺は諦められなくて。

 

 ――――お前が望むのならば。

 

「キラ、泣きたかったら泣いていいんだ」

「・・・っ、アスラン・・・ッ」

 不安に揺れる夜だけでも・・・と、そっと手を差し出した。

 

END.

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